グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Home >  在宅診療の教科書 >  在宅入院という考え方

在宅入院という考え方


在宅医療というと、「通院が難しくなった時に受ける医療」というイメージを持たれる方が多いかもしれません。
しかし実際の在宅医療は、それだけではありません。

私たちが大切にしている考え方の一つに、「在宅入院」という概念があります。
これは正式な医療制度の言葉ではありませんが、在宅医療の本質を理解するうえで、とても重要な考え方です。

今回は、この「在宅入院」という考え方についてご紹介します。

外来でも入院でもない医療

一般的に医療は、大きく分けると

  • 外来診療
  • 入院治療

の2つに分けられます。

外来では、診察や処方など比較的軽い治療を行います。
一方で、点滴や継続的な治療、状態の変化を細かく見る必要がある場合は入院となります。

では、在宅医療はどこに位置するのでしょうか。

私たちは、在宅医療は「外来と入院の間にある医療」だと考えています。

普段は外来に近い形で定期訪問を行いながら、状態が悪化した時には、入院に近いレベルの医療を自宅で提供する。
その状態を、私たちは「在宅入院」と呼んでいます。

自宅が治療の場になる

入院が必要になる理由の多くは、実はとてもシンプルです。

例えば…
  • 点滴などの医療行為が必要
  • 状態を継続的に観察する必要がある
  • 安心して療養できる環境が必要
といった理由です。

しかし在宅医療では、自宅そのものを療養の場に変えることができます

点滴治療や医療処置を行いながら、医師や看護師が頻回に訪問して状態を確認する。状態によっては、毎日訪問することもありますし、1日に複数回訪問することもあります。
つまり、病院のようにベッドが並んだ病室ではなくても、自宅で入院に近い医療を提供することが可能なのです。

例えば「肺炎」のケース

高齢者の方でよくあるのが、誤嚥性肺炎です。

90歳前後の方の場合、肺炎を繰り返すことは珍しくありません。
そのたびに入院を繰り返すと、環境が変わるストレス、体力の低下、認知機能の低下…といった問題が起きることもあります。

もし患者さんが「できるだけ家で過ごしたい」と希望されている場合、点滴や抗生剤治療を自宅で行いながら、医療スタッフが頻回に訪問して経過を見る。
こうした対応ができれば、入院せずに治療を進めることも可能になります。
これがまさに「在宅入院」の考え方です。

終末期を支える「在宅入院」

この考え方は、終末期の医療でも重要になります。
終末期の患者さんのご家族は、常に不安を抱えています。

呼吸が変わってきた。食事が取れなくなってきた。これからどうなるのか分からない。
そんな状況の中で「何かあったら連絡してください」と言われても、家族にとってはとても大きな負担です。

だからこそ私たちは、終末期こそ“入院しているような体制”で自宅を支えることを大切にしています。
患者さんの状態だけでなく、ご家族の不安・生活環境・介護の負担…そうした部分まで含めて診ていくことが、在宅医療の役割だと考えています。

在宅医療は「チーム」で成り立つ

在宅医療は、医師だけでは実現できません。

訪問看護師、ケアマネジャー、ヘルパーなど、多くの職種が連携してはじめて成り立ちます。

患者さんの生活を支えるチームがあるからこそ、

  • 入院せずに治療できる
  • 家族の負担を減らせる
  • 最期まで自宅で過ごすことができる

こうした医療が実現できるのです。

在宅医療のこれから

これからの在宅医療では、より重症の患者さんを自宅で支える力が求められていくと考えています。

単に「通院できない方の医療」ではなく、

  • 急性期に近い医療
  • 生活を支える医療
  • 終末期を支える医療

それらを総合的に提供する医療へと進んでいきます。
その中心にあるのが、「在宅入院」という考え方です。

自宅という安心出来る場所で、その人らしい人生を最期まで支える。
私たちはこれからも、地域の皆様の生活に寄り添う在宅医療を続けていきたいと考えています。