グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Home >  在宅診療の教科書 >  「訪問診療って、いつ使うもの?」_10年の現場から見えてきた本当の役割

「訪問診療って、いつ使うもの?」_10年の現場から見えてきた本当の役割


「訪問診療って、最期の時にお願いするものですよね?」

地域の方から、よくこのような声をいただきます。
確かにそのイメージは間違いではありませんが、実際の現場では少し違った役割も担っています。

今回は、訪問診療の「本当の使いどころ」について、現場の視点からお伝えします。

訪問診療は「最期の医療」だけではない

訪問診療というと、がんの終末期や自宅での看取りなど、といった場面を思い浮かべる方が多いかもしれません。

実際、私たちも年間約400件の看取りに関わっていますが、一方で、日々診療している患者様の多くは終末期ではありません。

では、残りの多くの方にとっての訪問診療とは何か。
それは、「生活を支える医療」、そして「入院を防ぐ医療」です。

本当はもっと早く関わるべき医療

現在、訪問診療を開始するきっかけの多くは「入院後」です。

  • 退院後の生活が不安
  • 通院が難しくなってきた
  • 自宅での療養を勧められた
こうした流れで導入されるケースが半数以上を占めています。

しかし本来は、「通院が少し大変になってきた」このタイミングで相談していただくのが理想的です。

在宅でできる医療は、想像以上に広がっている

訪問診療では、
  • 夜間の急な体調変化への対応
  • 自宅での点滴治療
  • 発熱や肺炎の早期対応
といった医療が日常的に行われています。

例えば、金曜日の夜に発熱した場合。

通常であれば週末を挟んで受診が遅れ、重症化し入院…という流れになりがちです。
しかし訪問診療であれば、その日のうちに対応が可能です。
この「初動の72時間」が変わることで、入院を防げるケースは少なくありません。

入院を減らす「予防医療」としての役割

一般的に、人は高齢になると入院が増えます。

特に80歳以降に入院の多くが集中すると言われています。

訪問診療は、この流れに対して
  • 早期対応
  • 日常的な状態把握
  • 生活環境の調整
を行うことで、「入院しないで済む状態」をつくる医療でもあります。

つまり、治療だけでなく「人生の後半をどう過ごすか」に関わる医療なのです。

もう一つの大切な役割_「意思を守る医療」

訪問診療のもう一つの重要な役割は、「本人の意思を守ること」です。

現代の医療現場では、
  • 急変時に痰事案で意思決定を迫られる
  • 家族の意向が優先される
  • 医療側の判断で方針が決まる
といったことが実際に起こります。

特に日本は「周囲の意向に影響されやすい社会」であり、本人の希望がそのまま実現されるとは限りません。

「どう生きたいか」より、「どう最期を迎えたいか」

例えば、「延命治療は望まない」「できれば自宅で過ごしたい」こうした思いがあっても、事前に家族と共有されていなければ、現場では実現が難しくなります。

実際、本人の意思だけでは医療判断ができない場面も多く、家族の同意がなければ方針は覆されてしまうこともあります。

大切なのは「事前の対話」

私たちが患者様に早い段階からお聞きするのは、「もしものとき、どうしたいですか?」という問いです。

答えが決まっていなくても構いません。
大切なのは、"考えるきっかけ”を持つことです。

そして、
  • 誰に最期を任せるのか
  • どこで過ごしたいのか
  • どこまで医療を望むのか
これを、ご家族と共有しておくことが何より重要です。

私たちが提供しているもの

訪問診療は、単に「家に来る医療」ではありません。
  • 24時間365日の安心
  • 生活を見据えた医療判断
  • 多職種と連携した支援体制
  • そして、人生の最終段階における意思の尊重
これらすべてを含めた「包括的な医療」です。

これから考えておきたいこと

もし今、「通院が少し負担になってきた」「将来的に不安を感じている」「家族と医療の話をしたことがない」こうした状況があれば、一度立ち止まって考えてみてください。

報恩診療は「困ってから使うもの」ではなく、「困らないために関わる医療」です。

これからの医療との付き合い方

私たちは、患者様の人生に寄り添いながら、「その人らしい最期」を支える医療を大切にしています。

医療は選択できる時代になりました。
だからこそ、自分自身の意思を持ち、周囲と共有することが重要です。

その一歩として、ぜひご家族と話す時間を持ってみてください。