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Home >  在宅診療の教科書 >  寝たきりの人にも、家族としての役割があるといい

寝たきりの人にも、家族としての役割があるといい


要介護になった人が、在宅療養を始めて家にいるようになると、家のなかの雰囲気や家族同士の関係性が、微妙に変わることがあります。特に要介護度が高い人、寝たきりの人は、すべてにおいて誰かの手を借りなければ生活ができません。そのため、家族のなかで自分が“お荷物”になっていると感じてしまうことがあります。

そうなると、たとえ介護をする側は「家にいてほしい」「進んで介護をしたい」という気持ちでやっていたとしても、介護を受ける側は「家族にいつも迷惑を掛けて申し訳ない」という気持ちが強くなり、せっかく住み慣れた家に戻ったのに、心からくつろげないということにもなりかねません。

家族というのは本来、家族のメンバーの中でそれぞれが自分の役割をもっています。そのうえでお互いに助けたり助けられたりしながら、家族という社会が成り立っています。
しかし、在宅療養をするようになって「介護する側・される側」という関係だけになってしまうと、どちらか、あるいは双方にとって居心地の悪い環境になってしまいます。
介護を受ける側は身近な人たちに対して「悪いね、ありがとう」を繰り返すばかりになりがちなところを、逆に「ありがとう」と言ってもらえる。寝たきりの人でも、家族の中で役割があることで、自分も家族の役に立っている、家族の一員である、という感覚を取り戻すことができます。

もちろん、要介護度やその人の環境によってもできることは異なります。しかし在宅療養中でも、介護を受ける側の人が介護をする側の人から「ありがとう」と言われるような、何かそういう瞬間が少しでもあると、要介護になり、寝たきりになった人でも、人としての尊厳が保たれるように思います。

家族にも「やってあげること」があることは大切

私たち在宅医療チームでは、在宅医療を始めた家庭のご家族間の関係にも目を配るようにしています。介護する側・される側がどのような関係で、どういう関わりをしているか。それによって在宅医療の続けやすさ、心地よさも変わってきます。
要介護の人と介護者がうまく関われていない家庭に関しては、声掛けや介助の仕方などをアドバイスすることもあります。

在宅療養のなかで、家族が互いに支え合っていると感じられる自然な関わりがあると、それが将来の「良い看取り」にもつながります。

引用元

『事例でわかる!家族のための「在宅医療」読本』 著者:内田貞輔(医療法人社団貞栄会 理事長)
発売日:2021年6月1日
出版社:幻冬舎