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在宅医療だからできる「薬の断捨離」



薬が“いつの間にか増えていく”という現実

高齢になるにつれ、整形外科・内科・皮膚科など、複数の医療機関へ通う場面が増えていきます。その結果、薬が10種類以上になることも珍しくありません。

腰痛には痛み止め
血圧には降圧剤
胃には胃薬
便秘には便秘薬…

こうして“気づいたら薬が増えていた”というケースは多く、在宅医療の現場でもよく見られます。
しかし_実はこの“薬の多さ”そのものが、体調を崩す原因になっていることがあります。

その整理を、訪問診療では「薬の断捨離(ポリファーマシーの解消)」として積極的に行っています。

薬を減らしたら「食欲が出て元気になった」

ある患者さんの例です。
整形外科・内科など複数の科へ通っていたため、薬は10種類以上。訪問診療に切り替わり、食欲低下が続いていましたが、腰痛も落ち着いてきたため、医師が思い切って薬を順番に減らしてみることにしました。

すると__

  • 2週間ほどで食事量が回復
  • 顔色も明るくなり
  • 体力が戻ってきた

という変化が起きました。
原因は、一つひとつの薬に大きな問題があったわけではありません。
少しずつの副作用が積み重なり、全体として大きな負担になっていたのです。

訪問診療では、もし症状が戻ればすぐに再訪問して調整できるため、「減らす」という選択肢がとりやすいのです。

薬をやめたら“腎臓の数値が改善した”ことも

印象的なケースとして、腎不全末期で「お看取りを考えましょう」と話していた患者さんがいました。
薬の多さが負担になるため思い切ってほとんどの薬を中止したところ__

異常値だった腎臓の数値(クレアチニン)が正常化 ⇨ 体調が改善 ⇨ その後4年以上元気に生活

とうい驚くべき変化が見られました。
もちろんすべての人に起こるわけではありませんが、薬を減らすことが体の負担を軽くするのは確かです。

なぜ薬が多いと負担になるのか

高齢者では、
  • 体重が減る
  • 食事量が減る
  • 筋力や臓器の働きが落ちる
ことで、同じ薬でも「効きすぎ」てしまうことがあります。

さらに、痛み止めで胃が荒れる→胃薬が追加
胃薬で腸が動きにくくなる→便秘薬が追加
のように、“薬の副作用を別の薬で対応する”という悪循環に陥ることも。

訪問診療は、生活全体を見ながら薬の必要性を判断できるため、この連鎖を断ち切るきっかけになります。

なぜ訪問診療だと薬を減らしやすいのか

外来では、薬を減らすと通院頻度が下がるため、どうしても「薬を続けましょう」という流れになりがちです。

一方、訪問診療では、症状が不安ならすぐ診に行ける、家の中の変化から体調を細かく把握できる、最後まで伴走できるという特徴があるため、減薬(薬を減らす判断)をしやすい環境と言えます。

また、終末期には新たに必要となる薬(痛み止め・苦痛緩和など)が増える時期があります。
そのときに備えても、“今飲む必要のない薬を減らしておく”ことはとても重要です。

薬を減らすことは「生活の質を上げること」

薬の断捨離とは、単に薬を減らす作業ではありません。

  • 食事が美味しくなる
  • 眠れるようになる
  • 気力が戻る
  • 便秘が改善
  • 活動量が上がる

といった、生活そのものの質を上げるきっかけとなります。

「薬が多くて、かえって元気がない気がする」「親の薬が10種類以上…これって普通?」

そんな不安がある方は、一度“薬の見直し”を考えてみる価値があります。
在宅医療は、そのための心強い選択肢です。

おわりに

薬は正しく使えば大きな助けになりますが、“飲み続けること”が目的になってはいけません。

その人の生活、体力、食事量、そして「どう生きたいか」。
訪問診療は、これらを総合的に見ながら薬を整えていく医療です。

「薬を減らしたら、生活が軽くなった」そんな患者さんを、私たちは何度も見てきました。

これからも、ひとりひとりの“その人らしい暮らし”を支える医療を届けていきたいと思います。

動画での解説はこちらから